養豚をやってみる〜No.3 生きてる子豚

見回りを終えると、エサ箱の掃除とエサやりをするよう頼まれた。

分娩舎なので、母豚一頭一頭、前日の記録を見ながらその豚に見合った量のエサをやっていく。


食欲旺盛で元気なママ豚は、僕がエサ箱の掃除をしようとして金具の取り外しを手こずると、すすんで手伝いをしてくれた。

エサをやると嬉しそうにガッついて足踏みをし、子豚をプレスしないか心配になるが、本当に美味しそうに食べるのでエサのやりがいがあるってものだ。


親豚くらいに大きくなると、顔にも個性が出ていて、なんか腹立つ顔の豚や、どう見てもブサイクな豚もいたりする。


けどエサを食べる時の笑ったみたいな顔は、どの豚もかわいい。


ママのメシ中、子豚は一箇所にかたまって、兄弟で暖め合いながら眠っている。かわいい。こんな愛しい光景はないだろう。


眠っている子豚にそっと触れてみると、予想以上に熱くて、やわらかくて、生きているのがわかる。初めて触った子豚は冷たくて硬い死体だったから、あまりの違いに驚いた。


さっき死体を目の当たりにした時は虚無感のほうが大きかったけど、生きてる子豚にふれた時、初めてどうしようもなく悲しくなって、周りに誰もいないことを確認して、子供みたいに泣いてしまった。


通路にはさっきの死体が放置されている。どうして他の兄弟と同じになれなかったんだろう。


とてつもなく深い、あわれみの気持ち。