養豚をやってみる〜No.5 後悔
午後はエサやりと水撒きであっという間に終わってしまいそうだ。
水撒きの時に、さっきまで元気だった子豚がママ豚に押しつぶされていた。
慌ててママ豚を退かして子豚を取り上げると、目は閉じているけど体はまだ暖かかった。
でも怖くて、息があるかどうかを確認できない。
その時Tさんは別の畜舎に行ってて周りには誰もいなかったため、かなり焦燥した僕は、この前運転免許センターで教わった心臓マッサージを試したりしたが目を覚まさないため、大パニックとなった。
もし生きてたとして別の畜舎に人を呼びに行っても、その間に死んでしまったらどうしよう。
そんなことを考えてるうちに、子豚はみるみる冷たくなっていった。
取り上げた時にはなんとなく、もう生きてないってわかっていたけど、それでも、かなり後悔した。
死んだ子豚は通路に置いて記録を取る決まりがあるけど、それ故に、この子豚を通路に置くという決意もできない。死んだかどうか…は、まあわかってるけど、わかりたくない。僕がそれを決めたくない。
それで僕は何を思ったか、子豚の死体をママ豚のもとへ置いた。
すると、兄弟たちがわらわら集まってきて、死んだ子豚の体を手で押したり、においをかいだりしていた。なんか変って思っているのかな。それ、死んだよ。ごめんよ。
一方、意外に、ママ豚は無関心である。
十分後、Tさんが戻ってきた時に子豚を見せる。もしかしたらTさんならなんとかするかもしれないという淡い期待は崩れ消えて、無言で、たった今冷たくなった新鮮な死体を通路に置き、カルテの事故死の箇所にチェックをつけた。
助けられなかったんだろうか。諦めてよかったのか。
あるいは僕に知識があれば、死ななくて済んだのではないか。
後悔で押しつぶされそうだ。