ポルシェと家族だけが存在する世界

ハロワから帰りのバス停まで歩く

寒くも暑くもない ぬるい外気にまみれて

金のことを考えながら 歩く

 

通りがかりのガソリンスタンドから

ビッカビカの 真っ赤なポルシェが出てくる

その窓からは ギラギラしたバブルババアが

イカした顔をのぞかせる

 

それを見た家族がはしゃいで

妖怪でもみたかような けたたましい声で

ポルシェだ!真っ赤なポルシェだ!

と、叫ぶ

 

百恵ちゃん世代にはたまらないらしいな

ポルシェのせいで透明人間になったぼくは

横断歩道のちょうど真ん中あたりで

家族とすれ違った

 

 

バブルババアは あのクソ目立つポルシェに乗って 

一体どこへ向かったんだろう

ギャーギャーうるさい家族たちは 仲良く歩いて

一体どこへ向かったんだろう

 

ぼくは一人 路線バスに乗って

また金のことを考えながら

いそいそ帰る